
現代社会を生きる私たちが知っておくべきジェンダー論の基本
『基礎ゼミ ジェンダースタディーズ』(世界思想社)は、ジェンダー、フェミニズム、LGBTQ+といった言葉に関心を持つ人におすすめできる、ジェンダー研究の入門書である。
この本は、普段は無視されがちな差別の交差性(インターセクショナリティ)の視点を重視したうえで、各章ごとにジェンダーにまつわる問いを立て、客観的なデータで検証していくスタイルを取る。「男らしさ・女らしさ」というジェンダー規範の何が問題なのか、いわゆる「萌え絵」と呼ばれるイラストが炎上するのはなぜなのか、女性はメイクをしなければいけないのか、スポーツは男性の方が向いているのか、といった多くの人にとって身近な問いから始まり、障害者の女性、部落出身の女性、トランスジェンダーなどの人々が直面する複雑な抑圧の構造についても考察される。ある属性ではマイノリティとして抑圧されている者も、他の属性ではマジョリティとして特権を持っている場合があるということや、マイノリティとして抑圧される属性が複数重なることで、その人特有の抑圧が生まれる場合があるということを、私たちに気付かせてくれる本だ。
また、それぞれの章の最後には、「性差別」や「ルッキズム」などの覚えておくべきキーワードや、関連して読むべき本のブックガイドが用意されているため、ジェンダーについて学びたいが、どこから学べばいいか分からない、という人にはもってこいの構成となっている。
入門書として非常に優れた本書ではあるが、ジェンダーについての知識がまったくない状態でこの本を読むと難しく感じられる場合もあるかもしれない。その場合は、この本と構成が似ていて、比較的平易な文章で書かれている『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた あなたがあなたらしくいられるための29問』(明石書店)をおすすめしたい。
現在の社会に存在する差別の構造を変えていくためには、まず、差別が存在していることに気付かなければならない。すべての者が生きやすい社会をつくりあげるためにも、『基礎ゼミ ジェンダースタディーズ』のようなインターセクショナリティの視点を重視するジェンダー論の入門書は、多くの人に読まれる必要があるだろう。興味を持った方は、ぜひ読んでみてほしい。そして、より良い社会をつくるためにはどうすればいいのかを、共に考えてもらいたい。

